メッス市駅 : Gare de Metz-Ville

25 déc. 2023


Place du Général De Gaulle, 57000 Metz, France.
1904-1908 : Jürgen Kröger + Peter Jürgensen + Jürgen Bachmann : style néo-roman (rhénan).
1991 : rénovation.
2004 : réaménagement.

ド・ゴール将軍広場、メッス、フランス
1904-1908年:ユルゲン・クレーガー+ペーター・ユルゲンセン+ユルゲン・バッハマン:(ラインラント式)ネオ=ロマネスク様式
1991年:修繕
2004年:改築

メッス(アルザス・ロレーヌ地方)がドイツ領であった頃に造られた駅。設計を主導したのは、皇帝ヴィルヘルム2世治下で活躍した建築家、ユルゲン・クレーガー。とにかく壮大かつ威厳のある建物で、当時、フランスを破り第2次産業革命も進み波に乗っていた、ドイツという国の勢いひしひしと感じさせる大建築です。

駅舎の全幅は300メートル以上にも達するとのこと。このように大規模になったのは通常の旅客、物流拠点としてだけでなく、軍事拠点としても重要な駅であったから。対フランスの最前線に位置する駅として、有事の際には1日に2万人以上の兵士と、その数に見合った騎馬、大砲をここから動員できる設計になっていたそうです。

見張り台としても、求心的な象徴的建造物としても築かれた塔屋。角に立つ彫像は、第2帝国軍でメッスに拠点を構えた第16軍団指揮官、G・V・ハスラーをモデルにしたもの。

執拗に反復され、入れ込構造にもなっている半円アーチ要素は、ロマネスク様式の特徴のひとつ。

ロマネスク様式はドイツ帝国の前身となった神聖ローマ帝国諸邦でよく用いられた様式。この伝統的な様式を新しい駅舎の全面に採用することで、みずからの起源を証しつつ、大国として名乗りを上げた自国の威信をアピールしようとする当時のドイツの人々の並々ならぬ熱意が感じられる気がします。また、装飾が、建物の表層に深みと厚みを与えることのできた最後の時代の輝きがそこに見られるようにも思われました。

なお、ネオ=ロマネスクの意匠をまとってはいても、建物の構造自体は鉄骨と鉄筋コンクリートという当時の新しい素材で築かれています。ちなみにこの駅舎の地盤は軟弱だったようで、基礎には鉄筋コンクリートの杭が3千本も打ち込まれているそうです。

堂々たる佇まいの玄関口。

外装に主に使用されているこの特徴的な灰白色の石材は、メッスと同じモゼール県に位置するニデルヴィレルという街で採れる砂岩であるそうです。

玄関周りの彫刻もやはり精巧で凝っています。

駅舎に入ると大空間がお出迎え。入ってすぐのところには彫刻があって、一瞬、宙にひとが浮いているのかと思ってぎょっとしました。これはドイツ人彫刻家シュテファン・バルケンホールの『ジャン・ムラン頌』という作品。

内部の装飾もやはり見事。

荘厳で開放感あふれる空間に圧倒されたことをいまでもよく覚えています。

ヴォールトと格天井で構成されたこちらの空間もすばらしい。

むかしの佇まいを随所に残しつつ、うまく近代化もされているように思いました。

Références

Photos prises en décembre 2017.
2017年12月撮影