アイヨー タワー : Tours Aillaud

20 févr. 2021

Tours Aillaud アイヨー・タワー


Avenue Pablo Picasso, 92000, Nanterre, France.
1973-1981 : Émile Aillaud.

パブロ・ピカソ通り、ナンテール、フランス
1973-1981年:エミール・アイヨー

パリ近郊、デファンス地区すぐそばの土地に建てられた集合住宅群で、設計はエミール・アイヨー。どこかなつかしい未来都市が忽然と出現したかのような、圧巻の光景です。迷彩柄のような独特の外壁から、アイヨー・タワーは別名「雲タワー」”Tours Nuages”とも呼ばれています。

低所得者向け集合住宅として全18棟、1500戸以上の住居を造り上げた一大プロジェクト。こうした大規模計画は画一的な四角い建物の林立になりがちなのですが、アイヨーはそれを避けるため、このような個性的な団地空間にしたとのこと。モダン建築とは別の方向のありうべき住環境を意識的に模索したという点で、アイヨー・タワー群はある種ポスト・モダン建築に位置づけられる気がします。

全18棟の内訳は、38階建ての棟が2つ、19階建ての棟が8つ、12階建てが8つ。敷地は起伏に富んでいて地下には駐車場が広がっています。車両は基本的に侵入不可なので歩行者中心の団地空間になっています。

とにかくたのしい空間なのでのんびり色々観察したくなるのですが、正直この界隈は治安が微妙なので身の回りをやや警戒しながらの散歩でした。この日は原付に2人乗りしたお兄さんたちがぶんぶん、歩道を走り回ってました。

うねりまくった地面とか、ぐにゃぐにゃした階段とかがなんとなくガウディをほうふつとさせる。カエデ、トネリコ、マロニエなど敷地内にはたくさんの木々が植わっているのですが、ナンテール歴史協会の記事によると、住戸数と同じ本数の木が植えられているとのこと。素敵な発想です。

建物入口の形状も非常に凝っています。

円筒形の玄関部。建物はプレキャストコンクリートで円筒形の棟を建て、それらをくっつけて外装で覆ったという造り。

唐突に大蛇が出現したりしてびっくりする。エミール・アイヨーは童心を忘れぬ建築家であったようで、この集合住宅地もそこに住まう子供たちのことを想定して計画したそうです。ちなみにこの蛇を製作したのはロランス・リエティという造形作家。

かめさんもいます。

粉砕ガラスタイルでできた「雲」の柄は、ファビオ・リエティの作品。竣工から40年ほどを経てさすがに劣化が進んだため、現在(2021年2月)、改修作業が進行中(のはず)です。改修後の建物はイノックスのステンレスで表面を覆われるそうで、メタリックな外観になってかなり趣が変わるので改修に反対する住民や地権者もいるとのこと。また、改修に併せてこの集合住宅地のイメージや機能も刷新すべく、住戸の一部をオフィス空間や宿泊施設に変えたり、託児所、保育園を設けたりしようとする計画も進行中です。

デファンス至近という好立地でありながらいまはやや荒んでしまっているこの地区が、このたびのテコ入れによって今後どう変化するのかとても気になります。

隣接するアンドレ・マルロー公園からの遠景。

Références

Photos prises en mars 2016 et en janvier 2018.
2016年3月、2018年1月撮影