185, rue Belliard, 75018, Paris.
1910-1913 : Henri Deneux.
* Céramiste : Ateliers Gentil & Bourdet.
ベリヤール街185番地、パリ18区
1910-1913年:アンリ・ドゥヌー
*外装のセラミック作製:ジャンティ&ブールデ製作所
パリのほぼ北の端、市街環状列車の線路跡地のそばに建つ住宅。壁面をびっしりと埋め尽くすタイル装飾が目を引く建物です。
この斬新な意匠の建物を設計したのはアンリ・ドゥヌー。惜しいことにドゥヌーはこれ以外の建物を設計することはなく、第一次大戦後は生まれ故郷のランスに戻って、戦禍により損壊した当地の大聖堂の修復に携わりました。
特筆すべきなのは外装だけでなく構造も同様で、この建物はかなり初期の鉄筋コンクリート造の建築事例となっております。さらに、鉄筋コンクリートの建設方式としてその後主流となってゆくエヌビック方式ではなく、コタンサン方式が採用されているそうです。コタンサン方式を採用した代表的人物としては、モンマルトルにあるサン=ジャン・ド・モンマルトル教会を設計したアナトール・ド・ボドが挙げられるのですが、ドゥヌーは彼の弟子であったので師の方式に倣ったのでしょう。
上層階の出窓の、台形状に迫り出した形態にコンクリートならではの力強さが感じられます。
ドゥヌーの建物は他にも、植栽と排水機構を備えたテラス付きの陸屋根や、各階に設置された「衛生設備」(たぶん浴室などを指すんだと思います)、採光と通風に配慮した開口など当時としては非常に先端的な試みがなされていました。
外装のセラミック(炻器)を手掛けたのはジャンティ&ブールデ製作所。同製作所はのちにルクソール映画館のモザイク装飾も担当することになります。
扉まわりの装飾も見事。コンパスと定規と共に描かれている人物は建築家の象徴。
低層部のセラミック装飾はすこしパターンが変わって、正方形の並ぶ市松模様のようになっています。
壁面の大部分を占めるこの円形と星形の模様は、ドゥヌーよりふた回りほど年上の建築家兼装飾家ジュール・ブルゴワンの著作、『アラビア芸術の諸要素――組み合わせ模様の特徴』(1879年)の中に原型が見出せることを、建築家のオディジエとピレが指摘しています(下記、一番最初に挙げた参照リンク)。はっきりした典拠を持つ異国趣味が表層に適用された建物としても、文化的価値が高い建築といえるでしょう。
Références
- Frédérique Audigier et Olivier Pilet, « Les entrelacs de la modernité », le site d’AUDIGIER | PILET architectes.
- Caroline Hauer, « Paris : Immeuble Deneux au 185 rue Belliard, illustration moderniste d'un renouveau architectural au début du XXème siècle – XVIIIème », le site Paris la douce.
- Éric Lapierre (et al.), Guide d’architecture Paris 1900-2008, Éditions du Pavillon de l’Arsenal, 2008, no. 176.
Autre travail d'Ateliers Gentil & Bourdet : ジャンティ&ブールデ製作所の他の仕事
Photos prises en décembre 2016 et décembre 2017.
2016年12月、2017年12月撮影