キャップ マイ : Cap Mail

22 févr. 2024

Cap Mail キャップ・マイ


1-5, mail François Mitterrand et quai Saint-Cyr, 35000, Rennes, France.
2015 : Ateliers Jean Nouvel.

フランソワ・ミッテラン並木通り1-5番地、サン=シール河岸、レンヌ、フランス
2015年:アトリエ・ジャン・ヌーヴェル

Cap Mail キャップ・マイ

レンヌ中心街の西、ヴィレンヌ川とイレ・ランス運河との分岐点に建つ集合住宅。1階部分には商業施設も入っています。設計はジャン・ヌーヴェルなのですが、同氏のウェブサイトの作品集にはなぜか掲載されておらず。何か理由があるのだろうか。

水辺に囲まれた建物であるだけに船のような形状になっています。黒くてシャープな外観なので普通の船というよりは戦艦のようないでたちで、とてもかっこいい。

道路側、フランソワ・ミッテラン並木通りからの眺めもやはり船のよう。ところでこの建築の名前、「キャップ・マイ」の「マイ」は”mail”と綴るのですが、これは「並木通り」を意味する言葉。英語の影響でフランス人も大分前から、この言葉を「メール」の意味でも使うようになってきているのですが、そのときの発音は最後の”L”を読んで「メル」(または「メィル」)になります。いまではこの言葉は「メール」の意味で使われることが圧倒的に多くなってきているので、発音の方もそれに引っ張られて、”mail”の字面を見たらフランス人は反射的に「メル」と言うような気がします。なのでこの建物はもしかしたら現地では「キャップ・メル」と呼ばれているかもしれないです。そこで実際の発音をYoutubeなどの動画で確認しようとしたのですが、事例が見つからずけっきょく分からずじまい。なお、「キャップ」は多義的な単語なのですがここでは「岬」の意味。

ヴィレンヌ川に面した敷地には段丘上の緑地が設けられていて快い水辺の空間になっています。

ケ・ブランリ博物館以来(?)、壁面緑化はジャン・ヌーヴェルの得意技となりつつあるような気がするのですがそれがこの建物にも用いられています。ヌーヴェルは硬質で鉱物質な建築も造るし、こういった有機物をうまく取り込んだ建築も造るし、非常に手数が多い建築家であると思います。

視線や空気が抜けるような空間も設けられています。

ガラスをめぐらせたテラスが連なる様子がうつくしい。住んだらとても開放感がありそうな住居です。集合住宅としての構成は、全45戸で、70平米の住戸もあれば300平米を越える住戸もあるそうです。そしてどの部屋も、やはりけっこう割高な価格設定であるようです。

1階部分には家具屋さんが入っています(2024年現在)。レンヌ市としては本当は文化公共施設を入れたかったらしいのですが商業の力が勝ちました。

F・ミッテラン並木通りから見上げた図。三角の突出部からの眺めはどんなだろう。

この建築は構想から実現まで15年以上を要した骨の折れるプロジェクトだったそうです。その原因は、用地取得が首尾よく運ばなかったりフランス文化遺産建築家団体から建設許可がなかなか下りなかったり、行政が階数制限を設けてきたり、といったことであったそうなのですが、それでもこうして完成にこぎつけたヌーヴェルや関係者の粘り強さに敬服します。

Références

Autres travaux de Jean Nouvel : ジャン・ヌーヴェルの他の建築

Photos prises en février 2018.
2018年2月撮影