9, allée des Pins et 7, rue des Arts, 92100, Boulogne-Billancourt, France.
1923-1925 : construction de la résidence-atelier Lipchitz : Le Corbusier.
1923-1926 : construction de la résidence-atelier Miestchaninoff : Le Corbusier.
パン小路9番地、アール街7番地、ブローニュ・ビヤンクール、フランス
1923-1925年:リプシッツの住居兼アトリエの建設:ル・コルビュジェ
1923-1926年:ミスチャニノフの住居兼アトリエの建設:ル・コルビュジェ
ル・コルビュジェの1920年代の作。写真の建物はミスチャニノフの住居兼アトリエ。オスカー・ミスチャニノフ(1884-1956)はロシア(現ベラルーシ)出身の彫刻家で、パリでの芸術修行中にコルビュジェと知り合いになりました。
リプシッツ邸とミスチャニノフ邸は、普段は居住者以外は立ち入りできない敷地にあるのですが、毎年9月中旬ごろにある「ヨーロッパ文化遺産の日」に限り、解説者の案内付きツアーで見学することができます。この写真もそのときに撮ったもの。
部外者の立ち入りを阻む門の前には案内板が立っています。この案内板で書かれていることは大体、本記事で紹介しようと思います。
この円筒形の部分には階段が収まっています。やさしげで少しユーモラスな造形。
写真左手に延びる渡り廊下は、同時期に同じくコルビュジェの設計で隣地に計画されていたヴィクトル・カナル邸とつながる予定だったのですが、カナルが別の場所に家を造ったためキャンセルになったとのこと。惜しい!
このミスチャニノフ邸、下記リンクのコルビュジェ・サイト・アソシエーションのサイト中の2014年撮影の写真では、壁の色は白いです。いつどういう経緯で壁の色が塗られたのか調べてみると、まず、2013年のコルビュジェ財団の年次報告書10頁に、ミスチャニノフ邸を改めて調査研究した結果、壁の塗料と色についての認識が改められたという記述がありました。この再調査にはどういう背景があったのかというと、2015年9月の『ル・モニトゥール』誌の記事によれば、1920年代の白くてモダンなコルビュジェ建築というという一般的イメージを再検討する機運が、コルビュジェ財団において高まっていたとのこと。同誌の見解によれば、「1920年代のコルビュジェ」=白という図式が定説となったのは、コルビュジェ建築図録の写真が白黒であったことや、コルビュジェ自身がモダン建築の白さを称揚する発言をしばしばしていたことや、モダニズムが時代遅れと見なされるようになりつつあった1970年代頃、白さを旗印にしてモダニズムを再興隆させようとする建築批評界の流行があったこと、といった要因が重なり合ったためだそうです。ところが近年、建物の(外)壁に関するより科学的かつ考古学的技術調査が可能になったことでいま一度建物の色を調べてみた結果、1920年代のコルビュジェ建築の白さは、しばしば後塗された白さであったと判明したのでした。ミスチャニノフ邸の塗り直しについて明示的に言及した情報は調べても結局出てこなかったのですが、上記の財団年次報告書と『ル・モニトゥール』記事とを考え合わせると、このミスチャニノフ邸も、元は着色されていた外壁が後から白塗りされてしまっていたのだろうと推測してほぼ間違いないと思います。それでつい最近の調査で判明した元の色が復元されて、今あるようなやわらかいクリーム色になったのではないでしょうか。「白の時代」のコルビュジェがじつはそんなに白くなかったというのは今のコルビュジェ研究者にとっては常識なのかもしれませんが、わたくしにとってはなかなか面白い発見でした。ギリシャの遺跡をわざわざ白く加工してしまったかつての大英博物館の逸話をなんとなく想起させる。
大きな開口部や水平窓があって、室内はとても明るそう。
お隣はリプシッツ邸。施主ジャック・リプシッツ(1891-1973)はリトアニア出身の彫刻家で、ミスチャニノフと同じく20世紀初頭にパリに出てきた芸術家でした。リプシッツの予算は少額であったので、このように小さく、質素な建物になったそうです。リプシッツの住居兼アトリエはずっと、赤色であった模様。
リプシッツ邸も窓が大きくて明るそう。
扉部分も非常に簡素です。中はどうなっているのか、見てみたい。
Références
- « Villas Lipchitz-Miestchaninoff, Boulogne-sur-Seine, France, 1923 », le site de la Fondation Le Corbusier.
- « Villas Boulogne-Billancourt », le site de l’Association des sites Le Corbusier.
- « Droit moral : suivi des travaux et projets de restauration / Autres projets », Rapport moral pour l’année 2013, Fondation Le Corbusier, p. 10 [consulté en novembre 2020].
- Bénédicte Chaljub, « Le Corbusier la redécouverte de la couleur », Le Moniteur, septembre 2015 [consulté en novembre 2020].
Autres travaux de Le Corbuiser : ル・コルビュジェの他の建築
- Atelier Ozenfant : アトリエ・オザンファン(1923)
- Maison La Roche - Jeanneret : ラ・ロッシュ=ジャヌレの家(1924)
- Maison Planeix : プラネクス邸(1928)
- Maison du Brésil : ブラジル館(1959)
Photos prises en septembre 2018.
2018年8月撮影