国立建築高等学校パリ=ヴァル ド セーヌ : École nationale supérieure d'architecture de Paris-Val de Seine

10 déc. 2025

École nationale supérieure d'architecture 国立建築高等学校


3-15, quai Panhard et Levassor, 75013, Paris.
2004-2007 : Frédéric Borel Architecte.

パナール・エ・ルヴァソール河岸3-15番地、パリ13区
2004-2007:フレデリック・ボレル建築事務所

フランスの文化省管轄で、2001年の法令により設置された建築の学校。2001年に創設されたものの、セーヌ左岸のこのキャンパスが完成したのは2007年で、それまでの間、学校は複数の建築教育施設に散らばって存在していました。学生や学校関係者は、この新旧の建築を織り交ぜた新キャンパスが完成したときは大いに喜んだものでしょう。

キャンパスの北側にある、れんがの外装の見るからに歴史のある建築は1891年造の圧縮空気工場でした。そこで生成された圧縮空気で何をしていたかというと、ここからパリ中にめぐらせた管で空気を送り、その動力によって、複数の公共物の時計を一気に同時に動かして時計間の時刻のずれ生じさせることなく管理する、ということが行われていたようです。そのような仕組みがあったことにびっくり。1994年に工場は操業停止し、その後大規模改築、用途変更を経て建築学校の施設の一部となりました。現在、建物内には展覧会会場や図書館などが入っています。

旧工場の南隣には斬新で大胆な形状の校舎が建っています。設計は、ひと目見たら忘れられないような強い印象を残す建築の造り手、フレデリック・ボレル。この校舎も、ボレルらしさが炸裂していてすばらしいです。余談なのですがボレルは最近(この記事を書いている2025年)、建築の実作においてかつてほどの目覚ましい活動を見聞きしないような気がするのですが、気のせいでしょうか。

見上げてアオリで撮りたくなってしまうかっこいい建築です。

このトラスでがっちり組まれた台座の下部には講堂が3つも入っているそうです。その上部には、大学の事務室などが配されています。

建物を南東から眺めた図。東側は船の行き交うセーヌ川に面し、南側はパリ外周道路とそれに沿って走る路面電車の線路に面しています。往来の激しい界隈にあって、そういった雰囲気とは無縁の外観になるよう配慮したそうです。

同じひとつの建物とは思えないくらい、分節化、断片化された外観。倉庫など港湾の風物を再解釈するような形での「複数の量塊の純粋なたわむれ」と、設計者は詩的に表現しています。

垂直の分節線が目立つ外観なのですが建物内はむしろ水平移動の容易さや回遊性に配慮されているようで、外観とは対照的で興味深いです。

ここが元工場であることを象徴的に告げ知らせる煙突が出迎える、キャンパス入口。なんだか非常に、ジョルジオ・デ・キリコの絵画っぽいです。

入口付近では若者たちが談笑していていかにも学校といった雰囲気。このキャンパスのすぐ近くにはパリ・シテ大学もあり、周辺は活気ある学生街となっています。

Références

  • « Val de Seine », le site du bureau Frédéric Borel Architecte.
  • « Histoire du bâtiment », le site de l'École nationale supérieure d'architecture de Paris-Val de Seine.

Autres travaux de Frédéric Borel : フレデリック・ボレルの他の建築

Photos prises en décembre 2016 et en novembre 2017.
2016年12月、2017年11月撮影